前川友吾氏 オンラインセミナー
eスポーツと生きる時代へ
前川 友吾 氏 オンラインセミナー
昨今、頻繁に耳にするようになった「e スポーツ」という単語。詳しい説明こそできなくとも、知らない人はほとんどいないのではないでしょうか。
10月22日のオンラインセミナーには、そんなeスポーツ市場から「日本学生esports協会 / Gameic (ゲーミック)」の代表理事・前川友吾氏にゲストとしてお越しいただきました。
日本学生esports協会/Gameicについて
前川氏が代表理事を務めるGameicは、
・2020年2月に設立
・設立から1年を待たずに、アマチュアeスポーツ市場のシェアNo.1
・現在、60大学を含む約500団体が所属
という日本最大級のeスポーツ協会です。
「eスポーツと生きる時代へ」をビジョンに、日本のeスポーツシーンを若い世代から盛り上げていき、eスポーツを通じて国内で新たなエンターテイメントや雇用、機会の創出をすることを目的として活動をしています。
本セミナーでは、こちらのGameicについてはもちろん、eスポーツ市場についても詳しくお話しいただきました。
日本学生esports協会 / Gameicは、全国で約500の団体様とパートナーシップを結び、高校生・大学生を中心としたeスポーツプレイヤーや団体・大会の認証や公認を始め、様々な支援活動を行なっております。各種支援を通して、eスポーツに関わるプレイヤーが心地良くeスポーツをプレイ出来る環境の整備を行なうと共に、若者だけでなく、全世代に向けてeスポーツの楽しさや素晴らしさを発信しております。
講演レポート
eスポーツとは
そもそも「eスポーツ」とは、コンピュータゲーム(ビデオゲーム)をスポーツ競技として捉える際の名称で、エレクトロニック・スポーツ (electronic sports) の略称です。定められたルールの下で、個人の実力やチームワークによって平等に勝敗が争われます。元々はゲームだったのですが、そこに競技性や遊戯性等が加わり、電子空間上のスポーツとなります。この説明の後によく「体を動かさないのにスポーツなの?」というご質問をいただきますが、eスポーツはズバリ、「脳みそを鍛錬するスポーツ」なのです。
また、「野球やサッカー等、スポーツのゲームがeスポーツ」と解釈されている方もいらっしゃいますが、これは正解でもあり間違いでもあります。そのゲームがスポーツを題材にしているかに関係なく、世界中のプレイヤー達が「これはeスポーツだ」と認めれば、それはeスポーツとなりますし、「これはゲームだね」と認識すれば、eスポーツとはなり得ません。世界的に見ると、サッカーゲーム「FIFA」なんかはeスポーツとして認知されていますね。
ドコモがeスポーツプレイヤーに年収を保証?!
NTTドコモが、今年始めに国内eスポーツリーグブランド「X-MOMENT」を設立し、その中で、「PUBG MOBILE JAPAN LEAGUE SEASON 1」(以下、「PMJL」)という大会を2月13日から開催しています。
このPMJLは、サッカーで言うJリーグ・野球で言うペナントレースのようなもので、事前の選考を通過した国内TOPの16チームがリーグ戦を行ない、その総合順位を争います。特にeスポーツ業界を賑わせたのは、そのお金事情。何と、年間25日の試合日、毎日、優勝チームには200万円、2位にも100万円、16チーム合計で約560万円の賞金が出ます。そして、シーズン優勝賞金は1億円、賞金総額は約3億円にものぼります。そして、更に話題となったのが、ドコモによる給与保証です。参加者には、リザーブ(控え)選手・マネージャーも含め、最低350万円が保証されました。これにより、参加プレイヤーはアルバイト等をすることなく、eスポーツのみに打ち込める1年間を過ごせることになりました。
※PUBG MOBILEについて
PUBG MOBILEは、スマートフォン等でプレイできる100人同時対戦のバトルロイヤルシューターゲームで、エリア内に落ちているアイテムで装備を強化していきながら、最後の1人(1チーム)になるまで戦い続けるもの。最大4人の仲間と協力するマルチプレイのSQUAD(スクワッド)、2人の連携が重要なDUO(デュオ)、自分1人の緊張感に溢れるSOLO(ソロ)モードが存在するが、今回PMJLで採用されたのはSQUADモード。
なぜeスポーツ市場はここまで拡大しているのか
世界eスポーツ市場は、大会の市場規模のみで1,000億円以上、ゲーム市場まで含めると10兆円規模になる莫大な市場です。経済産業省も2025年までに国内eスポーツ市場を3,000億円にまで引き上げると宣言しております。
それでは、なぜeスポーツ市場は世界中でこんなにもその市場規模を拡大しているのでしょうか。
その答えは、「広告」です。
MZ世代の若者たちが、テレビ、新聞、ラジオ等の既存の媒体から離れていき、各社の広告がなかなかリーチしなくなった矢先に注目されたのが、eスポーツでした。このMZ世代が、脇目も振らずに熱中していたためですね。例えば、世界で最も盛り上がっているeスポーツの1つである「League of Legends」(通称「LoL」「ロル」)は、月間アクティブユーザーだけで1億人もいます。この莫大な数の若者にどうにか広告をリーチできないか研究された結果生まれたのが、この様なコラボレーションです。
League of Legends 内のキャラクターとルイ・ヴィトンのコラボレーション
(https://www.famitsu.com/news/201910/31186057.html より引用)
ルイ・ヴィトン以外にも、ベンツ、BMW、ケンタッキー、Mastercard等、名だたるブランドがeスポーツ市場に参入し、大きな売上増加を達成しております。
若者だけじゃない!平均年齢69歳のeスポーツチーム
ここまで若者の文化として紹介してきたeスポーツですが、昨今、「高齢者eスポーツ市場」も盛り上がっています。認知症やMCI予防の観点から大きく注目されており、秋田県には平均年齢69歳の「マタギスナイパーズ」というチームができました。
こちらの「マタギスナイパーズ」、東北等の山岳地帯の猟師を意味する「マタギ」を、FPSプレイヤーとかけて命名されました。ゲームを通じた認知能力向上など健康増進に加え、世代間交流につなげる狙いで、月数回、約3時間の練習に参加可能な65歳以上の秋田在住者を募集しました。すると実に21人からの応募があり、その中から66~73歳の正式メンバーを8人、65歳未満の「ジュニア枠」を2人、練習生4人を選抜。リタイア後の新たな生きがいを探していた高齢者が多数応募してきたそうです。
「eスポーツ中の情報処理が、脳にいい形で負荷をかけて認知症に繋がる」というのはもちろんそうなのですが、もう2つ着目すべき点があり、1つはコミュニケーションの増加、1つは役割の獲得です。
eスポーツは基本的にチーム対チームで争うため、試合中はもちろん、練習中にもコミュニケーションが欠かせません。それは、ゲーム内での情報共有のためのコミュニケーションだけでなく、練習の間の何気ない会話等も含みます。このコミュニケーションの増加、人と関わる機会の増加が、認知症予防にいい効果をもたらすとされています。さらに言えば、eスポーツがコミュニケーションツールとなって、世代間交流ができるというのも面白いですね。おじいちゃんと孫が一緒にポケモンGOをやっていたように、同じチームメイトとして一緒にゲームができたら、そんなに楽しいことはないのではないでしょうか。
また、eスポーツはチーム戦であるため、各メンバーごとに役割が生まれます。積極的に敵を攻める人、その人をサポートする人、のように誰が欠けても成立し得ないチームが出来上がるんですね。この「役割の獲得」というのが、退職後であったり子育て後であったりの高齢者にとって、日々を彩る重要なピースの1つとなると共に、認知症等を予防してくれるのです。
講演では…
更に詳しいeスポーツ市場の解説、凸版印刷等の大企業のeスポーツ導入事例、ゲームをする子供への接し方、等々、プレイヤー・ビジネスマン・保護者の方々、あらゆる皆様にとって糧となるお話をしてくださいました。
「ゲーム先進国だけれども、eスポーツ後進国」という日本のeスポーツ市場。韓国からは20年程の遅れをとっていたものの、昨今その遅れを取り戻し、日々熱気を増しております。
eスポーツ市場は、ゲームをプレイする若者だけの市場ではございません。商品やサービスを広告したい企業はもちろん、優秀な人財を求める企業や、子供・孫を理解したいご両親や祖父母世代の皆様。「若者に関わりたい・寄り添いたい」という思いを持った皆様が関わるべき市場です。
是非、「コミュニケーションツールとしてのeスポーツ」を理解し、使いこなしてみてください。